ゼロポイント・フィールド 未達の恋(小説)

ゼロポイント・フィールド 未達の恋(小説)

ゼロポイント・フィールド 未達の恋 梗概と第一話

梗概琵琶湖畔のアトラクション村のキャラ「たびなぜ君」の着ぐるみのバイト中、俺は葦原に入り込んでゆく男の子を止めようと夕立の中、追ってゆく。振り向いた男の子を見てぞっとする。男の子は子供の俺だった。俺に向けた松の枝先は焚火のたで棒のように熾火...
ゼロポイント・フィールド 未達の恋(小説)

ゼロポイント・フィールド 未達の恋 第ニ話

第二話早朝、払曙の時間、ただ事でないカラスの声で目が覚める。けたたましい鳴き声で、三羽のカラスがまるで恐ろしい敵を見て大騒ぎをしている気配。一羽の鳴き声は他と比べてソプラノ風で、ずっと間断なく鳴き続けている。他の二羽はそれに呼応するように例...
ゼロポイント・フィールド 未達の恋(小説)

ゼロポイント・フィールド 未達の恋 第三話

第三話総支配人の北畠が俺の履歴書を目でなぞっている。もう3周したに違いない。こちらを時折チラ瞥する。卓上のミニ扇風機がそっぽを向いて首を振っている。壁際の半分ほど水が溜まった除湿器が一度ぼこぼこっと音を立てる。「ガタイもいいし、お若く見えま...
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ゼロポイント・フィールド 未達の恋 第四話

第四話「どうしたの?なんかいるの?」男の子は相変わらず何も言わずに芝草のあたりを抜け、身の丈を越えた3メートルほどにこんもりと盛り上がった琵琶湖特有の葦の群生の中にどんどん入っていく。どうやらこの葦の茂みは廃路を囲うように伸びているようで、...
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ゼロポイント・フィールド 未達の恋 第五話

第五話櫓の音がまた聞こえる。櫓が水を掻く音。波打ちの音。俺は櫓舟を漕いでいる。人を乗せて手漕ぎ舟を漕ぎ続けている。立ったまま櫓柄(ろづか)から右手を外し、櫓杆(ろづく)を握ったまま燃え上がる安土城の方を、同船の女と見やっている。静寂。無声映...
ゼロポイント・フィールド 未達の恋(小説)

ゼロポイント・フィールド 未達の恋 第六話

第六話開け放った病室の窓から「黒猫のタンゴ」が聞こえてくる。ラジオだろう。芸人がバックで懐メロの曲をいじって笑いを取ろうとコメントしているがなり声も混ざる。「この前、ユーチューブでこの曲を掛けると踊り始める黒猫が映ってましたんですわ、それが...
ゼロポイント・フィールド 未達の恋(小説)

ゼロポイント・フィールド 未達の恋 第七話

第七話のされていた平面からジオラマが立ち上がるように分断されていた子供のころの記憶が一巻のフィルムとしてつながり始め、俺の脳裏で立体化してゆく。嫌なことは記憶から消さなけば、嫌なことだらけの人生などやってゆけない。だから都合よくのしてゆく。...
ゼロポイント・フィールド 未達の恋(小説)

ゼロポイント・フィールド 未達の恋 第八話

第八話渡航歴のある岡田団次の帰国後の足跡はルーマニア大使館の口の軽い窓口職員のおかげですぐにつかめた。まともな職に就くはずはないと思っていたが、なんと三重県警の警部補に名を連ねていた。だが退職後の行方がまったく開示されておらず、手詰まりとな...
ゼロポイント・フィールド 未達の恋(小説)

ゼロポイント・フィールド 未達の恋 第九話

第九話俺はアイスクライミング用のアックス二本と12爪ロックフィルアイゼンを履いて塩湖に面した城壁を慎重にいちいち両足をそろえてから登頂している。踏み外せば一巻の終わり。この湖畔の軟禁先からDanaを救い出す。3歳ぐらいのときからブカレストの...
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ゼロポイント・フィールド 未達の恋 第十話

第十話俺が実子でないと疑う親父に邪魔者のようにスイス・シャッフハウゼンのボーディングスクール体操専科に入れられてから丸々一年たってやっと母が会いに来てくれた。表向き稽古という名目の体のいい虐待があまりに限度を超えているので、母由真も俺を親父...