ロコ・オルカーン

ロコ・オルカーン

梗概           「ロコ」三部作(オルカーン・ホテル・終章)

祭りの画家・守屋ジュンの妻利恵は自分のレーベル遺伝性視神経(Optikus-Neuropathie)症が息子のさとしに母系遺伝すると若い倉木医師から告知され絶望する。夏越の祓の晩、長瀞の石畳から身投げした利恵の溺死体をアトリエに寝かせ、ジュ...
ロコ・オルカーン

「風が吹くと悲しくなるのです。みりみりと風の音が聞こえます。ほら、また。それに、見えませんか?私に今見えるのは青い青い炎です。大きな二本の氷の柱が燃えています。見えませんか?  いいえ、この人は盲目ではありません。私のことも私より見えていま...
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ロコ・オルカーン Ⅰ

Mitsoukoはさとしの大きめのボア生地のキッズ・アノラックを裏返しに着て、フードの縁に施されているコヨーテ・ファーの毛先を小さな手で何度も引っ張って、もっと深々と被りなおそうとしている。裏返しに着れば、着ているものの持ち主が必ず会いに来...
ロコ・オルカーン

ロコ・オルカーン Ⅱ

コンペティションのあるコルマールに入る前夜、守屋ジュンは画学生としてパリにいたころから一度見たいと思っていたシュトラースブールの大聖堂に近い旧市街のホテルに泊まった。予期せず、日本人のビジネスマンが10名ほど同宿で、だれもが明らかに経営陣営...
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ロコ・オルカーン Ⅲ 

「こちらはマダム・Von Branchitschさん。」 Ottoは仰々しく胸に右腕を押し付けて右掌を心臓の上に当てる国歌斉唱の時の動作をして、ワゴンの横のアジア系の女性を皆に紹介した。背丈のあるマダム・フェラーと並んで立っていても顔半分低...
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ロコ・オルカーン Ⅳ 

コペンハーゲン行きのルフトハンザ機の丸窓から羽田の管制塔を見上げながら、ジュンは前年晩秋のアルザスのオルカーンの晩のことを思い出している。そして嵐明けの朝のさようならも言えず仕舞いだった慌ただしいErika との別れ。「そっちは無事か?」 ...
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ロコ・オルカーン Ⅴ

マダム・フェラーのワイナリーはGand CruのSchlossbergのRieslingが1978年のパリ農業コンクール(Concours General Agricole de Paris)で賞を取ったことで脚光を浴びた。Ottoが以前か...
ロコ・オルカーン

ロコ・オルカーン Ⅵ

マダム・フェラーのワイナリーはGand CruのSchlossbergのRieslingが1978年のパリ農業コンクール(Concours General Agricole de Paris)で賞を取ったことで脚光を浴びた。Ottoが以前か...
ロコ・オルカーン

ロコ・オルカーン Ⅶ

ジュンが描き上げた二枚の200号のキャンパスがKaysersberg城内の丸井戸の後ろの城壁に立てかけてある。ヘルパーたちがDomaineの二階のアトリエの窓から大きすぎるので大騒ぎをしながら下ろして、城に上る葡萄畑の畝坂を奇声を上げながら...